空の巣をまもっています

帰ってきたときに、いつでも、いつもの”おかえり”を言いたくて

夫の気持ち、わたしの気持ち

先生は「悪性リンパ腫」とはおっしゃいませんでした
リンパ節に問題がある
という表現でした


その宣告を受けた時の夫の気持ちはどうだったのでしょうか
感情を表に出さなかったので
わかりません


とりあえず
寝耳に水
だったことは夫もわたしも同じでした


とにかく手術して
原因を調べてもらえるんだ
という安心感だったかもしれません


泣いたり、取り乱したり
ドラマのワンシーンみたいな状況ではありませんでした
先生は淡々と事実を話して
わたしたちはその言葉通り受け止めていました


わたしは
リンパ節、腫瘍マーカー、PETの結果画像で
リンパのがんだということを確信しました
間違いであってほしいという望みが
ほぼないこともその時に理解しました


先生はやんわりと
今は治療が確立しているから
昔と違って治らない病気ではありません、とおっしゃってくれました


あまり覚えていないのですが、わたしは多分
泣いている暇はない
と強く意識したと思います


帰宅後すぐに調べました
夫の様子や、症状などから
多分これだという病名を推測しました
(そしてその推測は病名やステージまで当たりましたが
前向きな予測ではないので全然嬉しくなかったです)
確かに今は不治の病ではなくなったらしい
けど夫はかなり悪い状態のようです


真っ暗です


だって
夫は
いつも元気なはずだったのだから
元気で留守ばかりの鳥だったのだから

ただの虫垂炎(盲腸炎)のはずでした

虫垂炎のはずの入院から
何の進展もないまま
相変わらず高熱を抗生剤と解熱剤で抑える日々
どうして何も改善しないまま放置なんだろうと
夫は本当にイライラしていましたし
体力もかなり消耗し
病気のせいもありますがやせ細ってしまいました


大学病院だから
虫垂炎みたいな軽い病気は後回しにしてるのかな?
それにしても放置が長すぎる
わたしたちは不信感でいっぱいでした


約1ヶ月たった頃
外科の先生が夫のベッドにいらして
首筋や脇の下を触診しました


そして
虫垂炎というよりは
リンパが腫れているのでは?
もしかしたら
虫垂炎ではなくてリンパが悪いという見解を示してくれました


その日から消化器内科から消化器外科に移管されました
内科では、ろくな説明もなかったのですが
外科に移管した途端に
ものすごいスピードで検査や治療が進みました
それほど緊急性があったのだと思います
腫瘍マーカー、CT検査、PET検査、


その後
もはや虫垂の腫瘍を取ることは難しく
炎症を起こしている虫垂のあたりのリンパ節を
病理診断にかけるために
手術して取りましょう
と言われました


悪いところを全部取ることは不可能で
他に転移しているらしいこと
その根本の治療=リンパ節の治療をする他に
方法がないことを伺いました


手術にあたっては、腫瘍が大きすぎるため
その中のリンパ腫を取り出すことができないかもしれない
その際に大腸を傷つけると
人工肛門や腸重積の可能性もあること
リンパ節のすぐ近くにある大動脈を傷つけてしまうと
大出血を起こして命に危険が及ぶかも等
色々なリスクを説明されました


リスクリスクリスク。。。
説明はそればかりのような気がしました
難しい手術ではないですが
何があるかわかりませんから
ということでした


手術は
手術室に見送ってから、病室に運ばれるまで
2時間くらい
でも
とてもとても長く感じました
何も喉を通らず、持ち込んだ文庫本も
ほとんど目に入らず
持ち込んだカフェオレはほとんど残ったまま
冷めていました


手術は成功し
無事にリンパ節を採取することができたようです
ですが腫瘍はそのまま、転移したリンパ節もそのまま
あくまで治療ではなくて、採取のための手術が成功したということです


それでもリスクばかりを聞かされていたので
何も問題なく終わったことで
本当にホッとしました

健康診断はいつもオールAだった

仕事の関係で一時帰国していた夫
突然の高熱と腹痛があったため
かかりつけのクリニックへ


どうもおかしいということで
近隣の大学病院を紹介され
即日入院となりました
多分、虫垂炎でしょう、ということで


そのため夫もわたしも
ただの虫垂炎だと思っていました
きっと初めはお医者さまも


ですが、1ヶ月近く入院していて
手術の予定も言われなくて
いつまでも検査と抗生剤での治療のみ
高熱は下がらず、同じ状態が続きました


虫垂炎なら手術がデフォでしょ?
なんで手術してくれないの?と
夫もわたしも病院に対して疑心暗鬼の日々でした


後で聞けば
最初の検査の頃から悪性リンパ腫が疑われていたとのことでした


悪性リンパ腫は、血液のがんの一つで
血液のがんの中では一番多いがんのようです
そして
それはほとんど自覚もないし
本人の非で罹患するわけではない病気だそうです
実際
夫は毎年
健康診断でオールAだったのです